「かかりつけ薬剤師」制度は、名前こそ知られていますが、実際の利用者は多くない印象です。
患者さんからは「いらない」という声も聞かれます。
その背景には、制度自体の認知度の低さや、あえて一人の薬剤師を選ぶ必要性を感じない点があるようです。
具体的には、かかりつけ薬剤師の料金がいくらかかるのか、デメリットはないのか、といった疑問や、薬剤師さんからしつこい勧誘を受けて「うざい」と感じているケースもあるみたいですね。
そもそも、かかりつけ薬局との違いもよく分からない、という方もいるかもしれません。
私自身、薬剤師の立場として、現場の薬剤師さんがノルマなどで大変な思いをしている事情も耳にします。
一方で、患者さん側からすると、メリットが分かりにくい制度にお金を払うのは抵抗がある…という気持ちも、とてもよく分かります。
この記事では、なぜ「かかりつけ薬剤師はいらない」と感じるのか、患者さん側のデメリットや料金の問題、そして薬剤師側の事情にも触れつつ、本当に必要なのかを考えていきます。
もちろん、制度本来のメリット、特に高齢者にとっての24時間対応の必要性、さらには変更方法や上手な断り方まで、両方の視点から幅広く解説していきますね。
記事のポイント
- 「いらない」と感じる患者側の理由と薬剤師側の事情
- かかりつけ薬剤師にかかる料金の目安とデメリット
- 薬局がしつこい理由と上手な断り方
- 本当に必要なケースと不要なケースの判断基準
かかりつけ薬剤師はいらないと感じる理由

薬局で勧められても、多くの人が「かかりつけ薬剤師はいらない」と感じてしまうのには、いくつかのハッキリとした理由があるようです。
まずは、患者さん側が感じるデメリットや料金の負担、そして薬剤師さん側の「勧めなければいけない」事情も含めて、少し掘り下げて見ていきましょう。
かかりつけ薬剤師のデメリットとは

この制度、もちろん良い面もあるんですが、利用者側(患者さん)から見たデメリットも存在します。
私が思う主なデメリットは、次の3つかなと思います。
1. 薬局が固定される不便さ
かかりつけ薬剤師を決めると、原則としてその薬剤師さんがいる薬局を利用し続けることが推奨されます。
薬の情報を一元管理するためですね。
でも、これって結構不便に感じる人も多いはずです。
例えば、受診した病院のすぐ隣にある「門前薬局」で薬をもらうのが一番ラクなのに、わざわざかかりつけの薬局まで移動しないといけなくなります。
もちろん、他の薬局の利用が禁止されるわけではありませんが、そうすると制度のメリットが薄れてしまいます。
2. メリットを実感しにくいケース
かかりつけ薬剤師の最大のメリットは「薬の安全管理」です。
でも、普段から健康で、たまに風邪薬をもらう程度の人にとっては、その恩恵を実感しにくいかもしれません。
薬剤師さん側も、本当は多剤併用などで困っている人にこそ勧めたいのに、一律に声がけしないといけない状況だと、メリットを感じにくい方に勧める心苦しさを感じているかもしれませんね。
「別に追加料金を払ってまで必要ないかな」と感じてしまうのは、自然なことだと思います。
3. 追加費用がかかる
これが一番のネックかもしれません。
かかりつけ薬剤師を指名すると、通常の料金に加えて追加の費用が発生します。
この点については、次に詳しく解説しますね。
他の薬局も利用は可能ですが…
かかりつけ薬剤師がいても、他の薬局で薬をもらうことは可能です。
ただ、その場合、服薬情報の一元管理が途切れてしまいます。
自分でお薬手帳を見せるなどして、情報を正確に連携させる手間が発生する点は、デメリットと言えるでしょう。
かかりつけ薬剤師の料金はいくら?

「いらない」と感じる最も直接的な理由が、やはり「お金」の問題ですよね。
かかりつけ薬剤師を指名すると、通常の「薬剤服用歴管理指導料」の代わりに、「かかりつけ薬剤師指導料」というものが算定されます。
これは、処方箋を受け付けるたびに発生する費用です。
以前は「3割負担で約60円〜100円程度」と説明されることが多かったようですが、2024年度の診療報酬改定などを踏まえると、3割負担で約230円程度の追加負担となるケースもあります。
1回あたりで見れば少額かもしれませんが、病院にかかる度に毎回支払うとなると、積み重なれば結構な負担になります。
「将来の安全のため」と言われても、今すぐ必要性を感じていなければ、「即時のコスト」の方が重く感じてしまいますよね。
現場の薬剤師さんも、この追加料金が患者さんにとって大きなハードルになっていることは十分理解していると思います。
あくまで目安です
この金額は、あくまで一般的な計算例です。
診療報酬は複雑で、状況によって変動する可能性があります。
正確な費用については、利用を検討している薬局で直接確認していただくのが一番確実です。
なぜしつこい?薬局のノルマ事情

薬局で熱心に勧められて、「ちょっとしつこいな…」と感じた経験がある人もいるかもしれません。
実はこれ、薬剤師さん個人の熱意だけが理由ではないケースもあるんです。
私たちのように薬剤師さんの転職事情に触れていると、薬局側の経営的な背景が色濃く見えてきます。
薬局が熱心に勧める大きな理由の一つに、「地域支援体制加算」という制度があります。
これは、地域医療への貢献度が高い(24時間対応や在宅医療の実績など)薬局を評価し、調剤基本料にボーナス(加算)を与える仕組みです。
そして、この加算をもらうための重要な条件(施設基準)の一つに、「かかりつけ薬剤師指導料の算定回数が一定数以上であること」が含まれているんです。
つまり、薬局としては経営のためにこの加算が重要で、そのためにはかかりつけ薬剤師の同意を一定数集める必要がある…というわけです。
結果として、現場の薬剤師さんに「ノルマ」が課せられている場合も少なくないようです。
かかりつけ薬剤師とうざいと感じる背景

前の見出しで触れた「ノルマ」問題が、患者さんが「うざい」と感じてしまう背景に直結しています。
薬剤師さんも、会社の目標(ノルマ)があると、患者さん一人ひとりの状況をじっくり聞いた上で提案する、というよりは、対象になりそうな方全員に一律で声をかける、という対応になりがちです。
患者さん側からすれば、「私の健康状態も知らないのに、マニュアル通りに勧めてきているな」と感じてしまいますよね。
それが「自分のため」ではなく「薬局の売上のため」に見えてしまい、不信感や「うざい」という感情につながってしまう…というのが実情かなと思います。
ただ、多くの薬剤師さんは、ノルマとは関係なく「この患者さんには情報の一元管理が必要だ」という純粋な気持ちで勧めている場合も多い、という点も知っておきたいところです。
かかりつけ薬局との違いを解説

ここで、よく混同されがちな「かかりつけ薬局」との違いを整理しておきますね。
この二つ、似ているようで全く違います。
- かかりつけ薬剤師:特定の「人(薬剤師)」を指名する制度。同意書への署名が必要で、追加費用(かかりつけ薬剤師指導料)がかかります。原則24時間対応などが付帯します。
- かかりつけ薬局:特定の「場所(薬局)」を自分で決めて利用すること。単に「私はいつもこの薬局を使います」という患者さん側の意思決定です。手続きや追加費用は不要です。
| 項目 | かかりつけ薬剤師 | かかりつけ薬局 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定の「人」 | 特定の「場所」 |
| 登録 | 同意書への署名が必要 | 不要 |
| 費用 | 追加費用あり | 追加費用なし |
| 24時間対応 | 原則あり | 薬局による |
「かかりつけ薬剤師」制度に抵抗がある人でも、薬の情報を一元管理するために、まずは「かかりつけ薬局」を決めて、なるべく一箇所で薬をもらうようにするだけでも、安全性はかなり高まるのでおすすめです。
かかりつけ薬剤師はいらない、の前に知るメリット

さて、ここまでデメリットや薬局側の事情を見てきて、「やっぱり、かかりつけ薬剤師はいらないかな」という気持ちが強くなったかもしれません。
ですが、国がこの制度を推進するには、もちろん理由があります。
特に、特定の状況にある人にとっては、追加費用を払ってでも受ける価値のある、大きなメリットが存在するんです。
薬剤師さん側も、このメリットを届けたいと思って勧めているケースが多いはずです。
かかりつけ薬剤師のメリットは?

最大のメリットは、やはり「薬物治療の安全性が格段に高まること」です。
これは間違いありません。
具体的には、一人の薬剤師さんが、あなたのすべての薬の情報を一元管理してくれます。
これには、複数の病院からもらう処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含まれます。
これにより、
- 同じ効果の薬が重複していないか(重複投与の防止)
- 危険な飲み合わせがないか(相互作用の防止)
といったことを、専門家の目で継続的にチェックしてもらえます。
さらに、あなたの体質(アレルギー歴や副作用歴)や生活習慣まで把握した上で、「この薬は合わないかもしれない」
「この時間帯に飲むのはどうですか?」といった、あなた専用の個別アドバイスがもらえるようになります。
これは、その場限りの関係では難しい、継続的な関わりだからこそできるサービスですね。
24時間対応の具体的な内容

メリットとしてよく挙げられるのが「24時間対応」ですね。
これは、かかりつけ薬剤師が、原則として夜間や休日でも電話相談に応じてくれる体制のことです。
例えば、深夜に「あれ、薬飲み間違えたかも…」と不安になった時や、副作用のような症状が出た時に、すぐに専門家に相談できるという安心感は大きいですよね。
以前は薬剤師さん個人の負担が大きすぎると問題視もされていましたが、2024年度の改定で、薬局内の他の薬剤師と連携して対応する体制でもOKとなり、より現実的で持続可能な仕組みに改善されつつあります。
薬剤師さんの働き方という観点からも、これは良い改善かなと思います。
しかし緊急外来ではありません
あくまで「電話相談」が基本です。
高齢者にとっての必要性

この制度が最も真価を発揮するのが、高齢者の方、特に多くの薬を飲んでいる場合です。
一人の患者さんが複数の病院にかかり、薬の種類が増えすぎてしまう「多剤併用(ポリファーマシー)」は、副作用のリスクを急激に高めるため、大きな医療問題となっています。
かかりつけ薬剤師は、薬の全体像を把握し、「この薬は不要かもしれません」と医師に減薬の提案(疑義照会)を行うなど、ポリファーマシー問題の解決に重要な役割を果たします。
これこそが、薬剤師の専門性が最も活かされる場面の一つです。
また、在宅医療を受けている方の自宅を訪問し、薬の管理や服薬指導を行うことも、かかりつけ薬剤師の重要な仕事です。
ご家族の介護負担軽減にも直結しますね。
複数病院を利用する際の安全性

これは高齢者の方に限った話ではありません。
例えば、「内科」「皮膚科」「眼科」など、複数の専門クリニックを同時に受診している人は多いと思います。
その際、お医者さんが他の病院で処方されている薬をすべて把握しきれていないケースも、残念ながらあります。
かかりつけ薬剤師がいれば、あなたが薬局に処方箋を持ってきた段階で、「あ、今飲んでいる内科の薬と、新しく出た皮膚科の薬は、一緒に飲むと危ないですよ」と、最後の砦としてチェックしてくれます。
この医療安全のセーフティネットとしての機能は、大きなメリットです。
医師と連携する役割

かかりつけ薬剤師は、単に薬局で待っているだけではありません。
処方箋の内容に疑問があれば医師に問い合わせ(疑義照会)をしますし、患者さんの服薬状況や副作用の発現状況などを把握して、医師にフィードバックする役割も担います。
「この患者さんは錠剤が飲みにくいようなので、粉薬に変更しませんか?」といった具体的な提案をすることもあります。
まさに、医師や看護師と連携する「医療チームの一員」として、薬剤師の専門性を発揮し、治療全体の質を高めてくれる存在なんですね。
かかりつけ薬剤師はいらない場合の判断と対処

メリットとデメリット、そして薬剤師さん側の事情も見てきました。
その上で、「やっぱり今の自分には、かかりつけ薬剤師はいらないかな」と判断した場合。
あるいは、「勧められたけど、どうしよう」と迷っている場合。
具体的な対処法や判断基準をまとめます。
上手な断り方と例文

まず大前提として、かかりつけ薬剤師制度の利用は完全に任意です。
断ったからといって、その後のサービスが悪くなるようなことは一切ありませんし、あってはなりません。
とはいえ、薬剤師さんから熱心に勧められると、断りにくい雰囲気もありますよね。
薬剤師さんもお仕事(ノルマかも…)で勧めていると思うと、無下にもしにくいですし。
そんな時は、以下のような伝え方をしてみてはいかがでしょうか。
かかりつけ薬剤師の上手な断り方(例文)
- (検討する姿勢を見せる)「ご説明ありがとうございます。すごく良い制度だと思うので、一度持ち帰って検討させてください」
- (現時点での不要を伝える)「今は薬も少ないので、特に必要性を感じていなくて…。また薬が増えたりして必要になったら、こちらから相談させていただきますね」
- (薬局自体を評価する)「特定の薬剤師さんというよりは、この薬局自体を『かかりつけ薬局』として利用させてもらっているので、今のままで大丈夫です」
このように、相手の提案を一度受け止めつつ、自分の意思をハッキリ伝えるのがスムーズかなと思います。
薬剤師さんも、無理強いはしたくないはずですから。
かかりつけ薬剤師の変更は可能か

「一度同意書にサインしたけど、やっぱりやめたい」とか「担当の薬剤師さんと相性が合わない…」というケースもあるかもしれません。
結論から言うと、かかりつけ薬剤師はいつでも変更・中止(撤回)が可能です。
薬局の窓口で、「かかりつけ薬剤師の登録を中止したいです」と口頭で伝えれば大丈夫です。
特に理由を詳しく説明する必要もありません。
同じ薬局内の別の薬剤師さんに変更することも、別の薬局にかかりつけを変更することも自由です。
これは患者さんの正当な権利ですし、薬剤師側もそれを受け入れる義務があります。
自分に合わないと感じたら、遠慮なく申し出ることが大切です。
利用を推奨する人、不要な人

結局、自分はどっちなのか?を判断するための目安をまとめてみます。
利用を強く推奨するケース
- 複数の医療機関(病院・クリニック)を定期的に受診している
- 服用している薬の種類が常時5〜6種類以上ある(特に高齢者)
- 過去に薬の副作用やアレルギーを経験したことがある
- 処方薬以外に、市販薬やサプリメントを日常的に多く利用している
- 在宅医療を受けている、または家族が受けている
必要性が低い(いらないと判断してもよい)ケース
- 基本的に健康で、ごく稀に風邪などで病院にかかる程度
- 服用している薬が、長期間にわたり1〜2種類のみで安定している
- 利便性を最優先し、受診した病院の門前薬局をその都度利用したい
ご自身の状況がどちらに近いか、チェックしてみてください。
他の薬局利用時の注意点

かかりつけ薬剤師を登録した後でも、旅先で体調を崩したり、緊急で別の病院にかかったりして、他の薬局を利用する場面は出てきます。
前述の通り、他の薬局の利用は全く問題ありません。
ただし、その際は「お薬手帳」の役割が非常に重要になります。
- かかりつけ以外の薬局で、必ずお薬手帳を提示し、かかりつけ薬剤師がいることを伝えます。
- その薬局で、新しくもらった薬の情報を手帳に記録してもらいます。
- 次に、かかりつけ薬局へ行く際に、そのお薬手帳を必ず見せて、「他の薬局でこの薬をもらいました」と伝えます。
この「情報の橋渡し」を自分で行うことで、服薬情報の一元管理が維持されます。
薬剤師さんにとっても、情報が途切れることが一番のリスクなので、ぜひ協力してあげてください。
電子お薬手帳を活用するのも良い方法ですね。
まとめ:かかりつけ薬剤師はいらないか再考

今回は、「かかりつけ薬剤師はいらない」という疑問について、患者さん側のデメリットや料金、薬剤師さん側の事情、そして制度本来のメリットや対処法まで幅広く見てきました。
結論として、「かかりつけ薬剤師がすべての人に絶対必要」というわけではありません。
しかし、「すべての人にいらない」制度でもない、というのが私の見解です。
あなたの健康状態やライフスタイルによって、その価値は大きく変わります。
- 複数の薬を飲んでいて安全性が心配な方にとっては、月数百円の「安全への投資」になるでしょう。
- 健康で薬と無縁な方にとっては、今のところ「不要なコスト」に映るかもしれません。
この記事で得た、患者さん側と薬剤師さん側、両方の視点からの情報を材料に、ご自身の状況に照らし合わせて、最適な選択をしていただけたら嬉しいです。
最終的な判断に迷う場合は、薬局の薬剤師さんに「自分にとって本当に必要か?」を率直に相談してみるのが一番良いかもしれませんね。
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