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薬剤師×公認会計士ダブルライセンス

「薬剤師のままでいいのだろうか」と、ふとそんな気持ちになることはありませんか。

私自身、薬剤師として日々の業務をこなすなかで、もっと経営や財務の知識があれば、できることが広がるのではないかと感じたことがありました。

調剤業務は患者さんの命に関わる大切な仕事です。

ただ、一方でキャリアの可能性という面では、どうしても幅が限られているという感覚を持つ薬剤師も少なくないようです。

そのような状況のなかで、注目が集まっているのが薬剤師公認会計士ダブルライセンスという選択肢です。

一見すると畑違いに見えるこの組み合わせですが、実は医療業界において非常に希少なポジションを築ける、とても魅力的なキャリアパスなのです。

公認会計士(こうにんかいけいし)とは、企業の財務諸表を監査・証明する「監査業務」、会計に関する「会計業務」、そして税務に関する「税務業務」などを行える国家資格です。

日本公認会計士協会に登録することで、会計のプロフェッショナルとして認められます。

薬剤師資格を持ちながらこの資格を取得することで、医療と経営の両方に精通した珍しいポジションを確立できるというわけです。

この記事では、薬剤師として公認会計士資格に挑戦することの意味、実際のキャリアパス、試験の現実、そしてどんな働き方が見えてくるのか、私なりの視点でお伝えしていきます。

記事のポイント

  • 薬剤師が公認会計士を目指すことで広がる具体的なキャリアパス
  • ダブルライセンスが医療・製薬業界でなぜ希少価値を持つのか
  • 公認会計士試験の難易度と、薬剤師が働きながら合格するための現実的な学習方法
  • 資格取得に踏み出す前に考えておくべき投資対効果と注意点

薬剤師が公認会計士を取得する理由

薬剤師が公認会計士を取得する理由

薬剤師が感じるキャリアの限界感

薬剤師として働いていると、ある時期から「このままでよいのかな」という気持ちを抱えることがあります。

調剤業務は専門性が高い反面、仕事の幅が限定されていると感じやすいのです。

特に、薬局や病院で長く働いていると、以下のような場面に出くわすことが多くなります。

  • 経営数字を求められても、読み方がよくわからない
  • 薬局の収益改善を任されたのに、どこから手をつければいいか分からない
  • 管理職になったのに、財務の話になると自分だけ会話についていけない

このような経験が重なると、「会計の知識を持っていたら、もっとできることがあるのに」と思うようになりますよね。

そのような気持ちが、公認会計士という選択肢へ目を向けるきっかけになることが多いようです。

ポイント:「薬剤師+会計」の掛け合わせが生む独自性
医療業界では、薬の専門知識を持ちながら財務・会計も理解できる人材は極めて少ないです。この希少性こそが、ダブルライセンスの最大の強みになります。

医療・製薬業界で求められる会計人材

近年、医療法人や製薬会社が経営の効率化をより強く意識するようになっています。

調剤報酬の改定や薬価の見直しが続くなかで、「現場を知っている会計の専門家」への需要が高まっているというのが、業界の実情です。

公認会計士として医療業界で活躍できる主な場面には、次のようなものがあります。

  • 医療法人の財務監査や経営改善コンサルティング
  • 製薬会社の経営企画部門・財務部門
  • バイオベンチャーのIPO(株式公開)支援
  • 薬局グループのCFO(最高財務責任者)候補

薬剤師の知識があれば、医療業界特有の用語や現場の事情を自然に理解できます。

そこに公認会計士としての視点が加わることで、他の会計士には絶対にまねできない専門性が生まれます。

例えば、「GE薬品(ジェネリック医薬品)の薬価改定が在庫評価に与える影響」を検討するとき、薬の仕組みを知っている会計士は、クライアントの担当者と対等に話し合えます。

医療の言葉を「翻訳」しなくてもいいというのは、実務上で非常に大きなアドバンテージになります。

公認会計士が活躍する医療の最前線

バイオ・ヘルスケア領域では、政府の「スタートアップ育成5か年計画」の支援を受けながら、多くのバイオベンチャーが事業拡大や上場を目指しています。

このような企業では、財務管理ができる専門家が慢性的に不足しているのです。

薬剤師資格を持つ公認会計士は、こうした企業のCFOや管理部長として、経営の中枢に関わることができます。

これは、薬剤師として現場経験を積んできた人だからこそ発揮できる強みといえます。

また、医療分野においては、調剤報酬の改定・薬価の見直しが定期的に行われます。

こうした制度改定が医療機関や薬局の経営に与える影響を、リアルタイムで試算・分析できる専門家の需要はとても高いです。

数字の知識と現場の感覚を同時に持っている人材は、本当に限られているのが業界の現状なのです。

補足:バイオベンチャーと公認会計士の需要について
創薬AIや遺伝子治療など先端領域を中心に、研究開発資金の流入や政府の政策支援が続いており、IPOを目指す企業での公認会計士需要が非常に高まっています。(出典:マイナビ転職 会計士

ダブルライセンスで広がるキャリアパス

ダブルライセンスで広がるキャリアパス

監査法人・コンサルで医療専門家として活躍する

公認会計士の主な就職先のひとつが、監査法人です。

監査法人では企業の財務諸表を審査する「監査業務」を中心に行いますが、薬剤師資格を持つ会計士なら、医療法人や製薬会社の監査チームで特別な価値を発揮できます。

薬品在庫の評価方法や医薬品の特許期間に関する会計処理など、「現場感のわかる監査」が実現できるというわけです。

大手の監査法人(いわゆるBIG4)での職位別の年収目安は次のとおりです。

職位 年収の目安 主な業務内容
スタッフ(入社1〜3年目) 450万〜650万円程度 監査補助、書類作成
シニアスタッフ 600万〜850万円程度 監査実務リード
マネージャー 800万〜1,300万円程度 クライアント管理、チーム統括
シニアマネージャー 1,100万〜1,600万円程度 案件全体の統括・対外折衝
パートナー 1,500万円〜数千万円 法人経営・最終責任者

上記の年収はあくまで目安です。

実際の年収は勤務先の規模や個人の実績によって変わります。

ただ、医療専門家としての付加価値が正当に評価されれば、一般的な公認会計士よりも高いポジションを目指しやすくなります。

(出典:TAC株式会社『公認会計士 年収・給与』

製薬会社の経営企画・CFOとして働く

ダブルライセンスのもうひとつの大きな舞台が、製薬会社のビジネス側です。

大手新薬メーカーの平均年収は、管理職クラスで1,000万円を超えるケースも多く見られます。

薬剤師として製品の価値を深く理解し、さらに公認会計士として財務戦略を組み立てられる人材は、製薬会社の経営企画部門で非常に重宝されます。

具体的には、次のような役割が期待されます。

  • 新薬開発プロジェクトのコスト管理・収益予測
  • 薬価制度の改定が経営に与える影響の分析
  • M&A(企業の合併・買収)時のデューデリジェンス(財務調査)
  • IR(投資家向け広報)業務での専門的な説明対応

薬学と財務、両方を語れる人材はそれほど多くないため、自社の製品を財務的に語れる薬剤師×公認会計士は、製薬会社内でもとりわけ存在感を発揮できます。

さらに、外資系製薬会社が日本市場への参入を強化している動きが続いています。

そうした企業では、日本の保険制度や薬事規制を理解したうえで、グローバルな財務報告基準(IFRS)にも対応できる人材が求められます。

薬剤師資格を持つ公認会計士は、そのような高度なポジションに就きやすい条件を自然に備えているといえるでしょう。

独立・開業で医療経営コンサルを行う

最もチャレンジングで、やりがいも大きな選択肢が「独立」です。

医療法人や薬局グループを対象にした経営コンサルティング事務所を開設することで、自分の専門性を最大限に活かした働き方が実現します。

薬局の収益管理から、新規開業時の財務計画、スタッフの人件費構造の見直しまで、薬剤師として現場を知っているからこそ、リアルで実行可能なアドバイスができるのです。

単なる数字の専門家ではなく、「現場の言葉で話せる会計士」として信頼を得やすいのも、ダブルライセンスの強みです。

独立の場合、クライアントとの信頼関係構築がすべての基本になります。

「この先生は薬局の実態をわかってくれている」という安心感は、薬剤師出身の会計士だからこそ自然に生まれるものです。

そこに公認会計士としての数字の裏付けが加わることで、経営者から深く信頼されるパートナーになれます。

ポイント:独立する場合のキャリアイメージ
医療経営コンサルタントとして独立した場合、年収は案件の規模や受注数によりますが、専門性が高く評価されると、一般的なコンサルタントを上回る報酬が期待できる市場環境になっています。ただし、収入は個人の実績に依存しますので、独立の判断は慎重に行うことが大切です。

公認会計士試験の現実と学習計画

公認会計士試験の現実と学習計画

合格率7.4%という難関試験の構造

公認会計士試験は、日本でも有数の難関国家資格です。

令和7年(直近)の試験データによると、出願者22,056名に対して最終合格者は1,636名、合格率は7.4%となっています。

試験は大きく2段階に分かれています。

  • 短答式試験:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目
  • 論文式試験:会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学など)の5科目

短答式は択一問題、論文式は記述式で、両方を突破してはじめて最終合格となります。

薬剤師試験が薬学の専門知識を問うのに対し、公認会計士試験は「会計・財務・法律・租税」と、全く異なる知識体系が求められます。

特に「財務会計論」は、公認会計士試験のなかで最も配点が高く、かつ計算問題と理論問題の両方が出題される科目です。

数字に慣れている薬剤師であっても、会計特有の「借方・貸方」の考え方を習得するまでには、一定の時間がかかると考えておいたほうがよいでしょう。

(出典:リセマム『令和7年公認会計士試験 最終合格者数1,636名・合格率7.4%』

注意:薬剤師国家試験との比較
薬剤師国家試験の合格率は毎年60〜70%台であることが多く、公認会計士試験の7.4%という合格率は桁違いに難しいものです。「難しい試験は経験済み」という感覚だけで挑むと、学習量の見積もりを大きく誤る可能性があります。また、公認会計士試験は科目免除制度(一部科目の合格を翌年以降に持ち越せる)があるため、長期戦を視野に入れた計画的な学習が求められます。

薬剤師が働きながら合格するための学習計画

では、実際に薬剤師として働きながら公認会計士を目指す場合、どのくらいの学習が必要なのでしょうか。

一般的に合格に必要な学習時間は3,000〜5,000時間といわれています。

これを仕事と並行して行う場合、毎日2〜3時間の学習を2〜4年間続けることが目安になります。

現実的な学習計画を立てるためのヒントをまとめると、次のようになります。

  • まずは日商簿記2〜3級から始め、会計の基礎を固める
  • 専門学校や通信講座を活用し、重要論点を効率的に学ぶ
  • 通勤・休憩時間を使って、毎日少しずつ知識を積み上げる
  • 勉強できる環境を整えるため、勤務形態の調整も視野に入れる

独学での合格は極めて難しいため、資格スクール(CPA会計学院、TAC、大原など)の活用が現実的な選択肢です。

スクールによっては働きながら学べるオンライン講座も充実していますので、まずは資料請求から始めてみるとよいでしょう。

簿記から始めるステップアップ戦略

いきなり公認会計士試験に挑むのは、ハードルが高く感じる方も多いはずです。

そこで、まずは「日商簿記3級から始める」というステップアップ戦略をおすすめします。

会計の勉強を段階的に進めていくイメージは、次のとおりです。

ステップ 目標資格 学習のポイント
ステップ① 日商簿記3級 会計の基本概念・仕訳の感覚をつかむ
ステップ② 日商簿記2級 管理会計・工業簿記まで学ぶ。

財務諸表が読めるようになる

ステップ③ 日商簿記1級 公認会計士試験への土台づくり。

難易度が一気に上がる

ステップ④ 公認会計士試験 短答式→論文式の2段階に挑戦

簿記3級からスタートすることで、「自分に会計の適性があるか」を確かめながら段階的にスキルを積み上げられます。

焦らず丁寧に進めることが、長期的には近道になるのです。

薬剤師として培った「地道な勉強の継続力」は、公認会計士試験でも大きな武器になりますよ。

薬剤師として国家試験に合格した経験がある方なら、「膨大な量の暗記と理解を組み合わせた学習」は決して初めてではないはずです。

問題は「どの科目から着手するか」「どのスクールや教材が自分に合っているか」という方向性の選択です。

まずは無料の体験講義などを使って、自分に合う学習スタイルを見つけてみることをおすすめします。

ダブルライセンスを目指す前に知っておくこと

ダブルライセンスを目指す前に知っておくこと

時間と費用の投資対効果を考える

公認会計士のダブルライセンスに挑戦する前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。

それは「時間と費用の投資対効果」です。

資格スクールの費用は50〜80万円ほどかかることが多く、学習期間中の機会損失も含めると、決して小さくない投資になります。

挑戦を考える際には、次の点を自分なりに整理してみましょう。

  • 取得後にどのようなキャリアを実現したいのか具体的にイメージできているか
  • 今の職場で勤務形態を調整し、学習時間を確保できる環境があるか
  • 家族の理解やサポートを得られそうか
  • 合格に2〜4年かかった場合でも、モチベーションを維持し続けられそうか

資格は取得してからが本番です。

公認会計士資格があっても、医療業界での実務実績まで積み上げてはじめて、ダブルライセンスの価値が最大化されます。

資格よりも「どう活かすか」という戦略が大切だということを、忘れないでほしいです。

注意:断定を避けた慎重なご検討を
この記事で紹介したキャリアパスや年収はあくまで一般的な目安です。個人の経験・年齢・職歴・企業の規模・地域などによって大きく異なります。特に転職や独立を検討する際は、複数の専門家に相談するなど、慎重に判断してください。

薬剤師の経験を最大に活かす戦略

せっかくダブルライセンスを持つなら、薬剤師としての経験を最大限に活かす分野を選ぶことが重要です。

「会計士として医療業界で働く」のではなく、「薬剤師でもある会計士として医療の核心に関わる」というポジショニングが、他者との明確な差別化につながります。

具体的に、薬剤師経験が活きやすい分野は次のとおりです。

  • 医薬品の在庫・減損評価が絡む監査業務
  • 製薬会社のM&Aや導出入(ライセンス契約)における価値評価
  • 薬局チェーンの財務デューデリジェンス(詳細な財務調査)
  • 調剤報酬・薬価改定の経営影響シミュレーション

薬剤師の専門用語がわかるだけで、クライアントとの信頼関係の構築スピードが全然違うという声も聞かれます。

これは、薬剤師として現場経験を積んできた私たちだけが持てる財産です。

まず行動する、最初の一歩はここから

「挑戦してみたいけれど、何から始めればいいか分からない」という方に向けて、最初の一歩として取り組みやすいことをご提案します。

  • 日商簿記3級のテキストを1冊購入してみる
  • 資格スクール(TAC、大原、CPA会計学院など)の無料説明会に参加する
  • 現職の同僚や上司に相談し、勤務形態の調整が可能かどうか確認する
  • 公認会計士として活躍している薬剤師のブログやSNSを読んでみる

「大きな決断」である前に、「小さな行動」を積み重ねてみることが大切です。

情報を集めるだけでも、自分の適性や意欲の方向性が見えてくることがあります。

まずは気軽に始めてみてはどうでしょうか。

補足:資格スクールのオンライン活用について
TACや大原、CPA会計学院などの大手資格スクールでは、薬剤師のような社会人が隙間時間に学べるオンライン講座を充実させています。まずは各社の資料を取り寄せて、学習イメージを具体的につかんでみるのがおすすめです。

まとめ:薬剤師×公認会計士という選択の可能性

まとめ

薬剤師と公認会計士のダブルライセンスは、挑戦のハードルは決して低くありませんが、それを乗り越えた先には「医療現場を知る会計の専門家」という、非常に希少なポジションが待っています。

監査法人での医療業界専門チームへの参加、製薬会社の経営企画・CFOへのキャリアアップ、そして医療経営コンサルとしての独立など、選べる道は一つではありません。

薬剤師として現場で積み上げてきた経験は、公認会計士として働く場面でも確実に活きてきます。

医薬品の知識や医療現場の文化を理解したうえで財務や経営を語れることは、一般的な会計士には決してできないことです。

だからこそ、薬剤師である私たちにしか実現できないキャリアの可能性がそこにはあります。

試験の難易度は確かに高く、学習にかかる時間も費用も決して小さくありません。

それでも、「薬剤師としての専門性をもっと社会に活かしたい」「経営の中枢に関わる仕事がしたい」という方にとって、公認会計士はその答えになり得る資格の一つといえます。

まずは自分のキャリアビジョンを描いてみることから始めてみましょう。

最初の一歩は、あなたが思っているより小さくて大丈夫です。

まずは簿記3級の参考書を手に取ることから、あるいは資格スクールの無料相談から、小さな行動を始めてみましょう。

薬剤師×公認会計士という掛け合わせが、未来のキャリアにどんな可能性を開いてくれるか、ぜひ自分自身で確かめてみてほしいです。